なぜ就活フェアはグループ院ばかり?大量採用の構造と絶対に知っておきたい裏側
この動画の内容はこちらの動画でも解説しています。
「整骨院といえば個人経営のイメージだったのに、就職フェアに行くとグループ院ばかり……」
そんな違和感を持ったことはありませんか?
実は、治療院グループが大量採用をしている裏には、とあるビジネスの仕組みがあります。
入社してから「思ってたのと違った…」」と後悔しないためにも、本記事では大量採用の仕組みや裏側を分かりやすく解説します。
1986年生まれ。千葉市出身。3児の父。 2018年(株)じんじあいであ設立。 整骨院業界に採用という角度から貢献するため、教育・運営・店舗展開なども多面的にサポート。 人材供給だけでなくフォローアップ、院運営のコンサルティングも行う
治療院グループが大量採用できる理由

そもそも「大量採用」の基準とは?
治療院業界における「大量採用」とは、具体的にどのくらいの規模を指すのでしょうか。
一つの目安となるのは、年間で「1店舗あたり1名以上」を採用しているかどうかです。
例えば30店舗を展開するグループが年間30〜50名を採用したり、70店舗で150名を採用したりするケースは、ここで言う「大量採用」に該当します。
いろんなサイトに求人を出していたり、就職フェアで大きなブースを構えている整骨院・鍼灸院のグループは、まさにこの「大量採用系」の代表格と言えます。
大手治療院グループならではの高待遇
こうした大手グループ院が提示する条件を見て、その待遇の良さに驚く方も多いはずです。
実際に大量採用を行う大手グループ院では、新人の初任給として28万〜32万円という高い水準を提示している会社も珍しくありません。
これだけ高い給与を若手に安定して支払える仕組みを整えていること自体は、ビジネスとして本当に素晴らしく、評価されるべき実績です。
ただ、ここで少し視点を変えてみてください。
「なぜ、これだけの高いランニングコスト(人件費や採用費)をかけながら利益を出し続けられるのか?」ということです。
そこには莫大なコストを確実に回収するための、非常によくできた「裏の仕組み」が存在しているのです。
治療院グループの大量採用を叶える3つの仕組み

仕組み1:高額回数券によるLTV(生涯顧客価値)の回収
新患獲得コスト「1人1万円」の壁
現在、治療院がGoogle広告やInstagramなどのネット経由で新規の患者様を1人集めるには、平均して約1万円ほどのコスト(顧客獲得単価)がかかります。
もしその患者様が1回1000円〜1500円(窓口負担が数百円)の保険診療だけを利用する場合、院側は7〜10回以上通ってもらって、ようやく元が取れる計算になります。
しかし、院の経営には人件費や家賃などの支払いもあるため、これだけでは手元に利益が残りません。
つまり低単価の保険施術だけを続けるモデルは、ビジネスとしてかなり厳しい状態にあります。
営業トークで信頼を獲得し、LTVを一撃で回収する
そこで登場するのが、15万〜25万円という高額な回数券(パッケージ商品)です。
昔ながらの地域密着の整骨院であれば、1回1000円の施術に10年間通ってもらうことで、時間をかけて信頼関係と売上を築いていました。
しかし、それは決して簡単なことではなく、経験の浅い新人スタッフにはなかなかできません。
そこで大手グループ院の多くが行なっているのが、高額な回数券(パッケージ商品)を売ることです。
具体的には、初診の段階で3ヶ月(計24回など)の通院プランを提案し、回数券として販売するのです。
これにより、新患獲得にかかった広告費と人件費を一気に回収しているのです。
仕組み2:ファミレスと同じ「センターキッチン構造」
誰でも提供できる「鉄板マニュアル」
大量採用を行う大手グループ院では、スタッフ全員が同じ品質のサービスを提供できるようにほとんどの治療メニューがマニュアル化されています。
これは、大手ファミリーレストランの仕組みと同じです。
本部のセンターキッチンで一括調理したソースを冷凍して各店舗に送り、店舗ではそのソースを温めるだけで誰でも美味しい料理を提供できる仕組みと同じです。
治療院における「センターキッチン」に該当するのが、骨盤矯正、EMS、ハイボルテージ、猫背矯正といった、誰がやっても効果にブレが出にくい「鉄板マニュアルメニュー」です。
これらをパッケージ化することで、どの店舗でも同じような治療を再現できる仕組みを整えています。
若手でもすぐに現場に立てるけど…
毎年何十人と大量採用するということは、その分の給料を支払っていると言うこと。
会社としては、新人スタッフを1日でも早く現場デビューさせ、売上を生み出す戦力になってもらう必要があります。
そのため、何年もかけて職人としての技術を修行させるのではなく、「マニュアル化された特定のメニュー」を徹底的に教育し、最短期間で現場に立たせるスピード重視の教育が行われます。
「早くから患者様を診させてもらえる素晴らしい環境」にも思えますが、その裏には「早くデビューさせないと会社が利益を圧迫してしまう」という経営上の切実な理由があるのも事実です。
仕組み3:治療技術ではなく「喋る練習(クロージング)」
骨盤の歪みは本当の原因なのか?
大手グループ院の新人スタッフの研修には、必ずと言っていいほど「回数券を買ってもらうための喋り(クロージングトーク)の練習」があります。
よくあるのが「人間の頭の重さはボーリングの球と同じくらい重いんです。だから少しの姿勢の崩れで骨盤が歪み、背骨に負荷がかかって神経を圧迫し、今の痛みが出ているんですよ」といった、骨盤矯正へと着地させる決まりきった説明パターン。
目の前の患者様の本当の原因を探る触診技術よりも、「痛みの原因は骨盤の歪みにある」と説明し、週2回の通院が必要だと納得してもらうトークスキルのほうが重要視されるのです。
分業制の罠:「回数券を売る人」と「施術を消化する人」
こうした仕組みが徹底された大規模なグループ院では、スタッフの役割がさらに細分化されているケースがあります。
コミュニケーション能力が高く、喋って売ることが得意なスタッフは「回数券を売る専門(クロージング部隊)」に。
逆に、喋りが少し苦手なスタッフは、売れた回数券の「施術をひたすら消化する専門(消化部隊)」に割り振られます。
「A先生を信頼して15万円の回数券を買ったのに、2回目以降は全く知らない新人が担当し、毎回施術者が変わる」といった大手ならではの現象も。
大手グループ院はほとんどが担当制ではありませんが、こうした分業システムから生まれているのです。
高待遇と引き換えの代償

治療家?もしくは営業マン?
大手グループ院ならではの高い初任給や整った研修制度の裏には、必ず代償が存在します。
まずはポジティブな面からお話しすると、大量採用を行う大手グループ院で働くことで身につくのは「素晴らしい営業スキル」です。
初対面の患者様と一瞬で打ち解け、この先生を信じようと思わせるコミュニケーション能力や、高額な商品を納得して購入してもらうクロージングの技術は、社会人として間違いなく一生モノの武器になります。
しかし、その一方で失われやすいのが「あなた自身にしかできない属人的な治療技術」です。
マニュアル化された施術を全員で分業して消化していく会社システムの中では、目の前の患者様と1対1で深く向き合い、自分の頭で原因を考えてオーダーメイドの治療を行う経験はどうしても積みにくくなります。
自分が目指していたのは「素晴らしい営業マン」だったのか、それとも「職人のような治療家」だったのかを、就職前に一度立ち止まって考えてみることが大切です。
「患者様のため」という言葉の罠
治療院業界では、どこに行っても「患者様のために」という言葉が飛び交います。
もちろんそれは素晴らしい理念ですし、働く上での大きなやりがいになります。
ただ大量採用のビジネスモデルにおいては、この美しい言葉が時に「回数券の販売(売上)」を正当化するための都合の良い言葉として使われてしまう側面もあります。
ここで、胸に手を当てて、この質問を自分に投げかけてみてください。
「もし自分の大切な親や家族が全く同じ症状で悩んでいたとしたら、あなたはその15万〜25万円の回数券を、同じように自信を持って売ることができますか?」
一瞬でも迷いが生じるのであれば、今のやり方が「売上のための営業」に偏っているサインかもしれません。
「自分が高校生のときに怪我を治してくれて、メンタルまで寄り添ってくれた憧れの先生」に、今の働き方のままで本当に近づけるのか、今一度じっくりと考えてほしいのです。
後悔しない就職活動のために、今やるべきこと

高待遇の裏にある代償を知って、自分で選ぶ
勘違いしてほしくないのは、大手グループ院のビジネスモデル自体は決して「悪」ではないということです。
若手の治療家に高い給料を支払い生活を安定させているのは、本当に素晴らしいことです。
大切なのは、その高い給料の裏にこれまで説明したような「回数券の販売」や「マニュアルによる分業」という仕組みがセットになっているという事実を、就活生側が事前に正しく理解しておくことです。
その見えない代償をしっかりと自分の頭で納得し、飲み込んだ上で進むのであれば、大手グループ院は非常に魅力的な選択肢になります。
何も知らずに入って後悔する、ということも避けられます。
異なる特徴の院を比較する
就職活動を成功させるためにぜひ実践してほしいのが、特徴の異なる複数の院を比較することです。
弊社じんじあいであでは、特徴ごとに整骨院を4つのポジションに分けています。
多くの学生は、求人フェアで目にする「大量採用の大手グループ院」だけを3〜4社見て、その中から就職先を決めてしまいがちです。しかし、これでは視野が狭くなってしまいます。
例えば、以下のように全く特徴の異なるタイプの院を、比較対象として同時に見てみてください。
- 技術をじっくり学べるが、初任給はやや低めな「個人経営の院」
- 規模は小さくても、治療マニュアルが徹底されていて初任給も高い「小規模・高条件の院」
- 数店舗を構えていて、技術研修もしっかりある「小規模・技術系の院」
このように「技術重視」「条件重視」など、個性の異なる院を横断して比較することで、自分が本当に求めている働き方が見えてくるはずです。
まとめ
大手グループ院の仕組みや大量採用の裏事情を知ると、少し怖く感じてしまうかもしれません。
しかし、これらはどれも業界のリアルなビジネスの仕組みであり、一概にどちらが良い悪いと決めつけられるものではありません。
一番大切なのは、あなたが「どんな治療家になりたいのか」という軸を持つことです。
業界の情報をしっかり集め、仕組みの裏側まで納得した上で決めた道であれば、どの選択肢を選んでも納得できるはずです。
弊社じんじあいであのYoutubeでは、治療院業界の裏側や治療家のキャリアについても解説しています。ぜひ情報収集に活用してみてください。
